甲状披裂筋の役割 外筋と内筋は反比例する ベルティングや張り上げの魅力と危険性 男声の出し方

甲状披裂筋は、地声系の筋肉。
地声を出す、または地声で声を張るには甲状披裂筋を発動させる必要がある。

甲状披裂筋は、内甲状披裂筋(以下、内筋)と外甲状披裂筋(以下、外筋)の二つに分かれる。

内筋であれ外筋であれ、甲状披裂筋が入る時点で声は重くなる。
甲状披裂筋が入らないのが一番軽い。

なので、純粋な裏声や、裏声系アンザッツには、内筋は勿論、外筋も入ってはいけない。

多くのサイトや動画では、甲状披裂筋を一括りにして語られているが、内筋と外筋に分かれているところが重要であり、二つの働きは違う。

この記事では、内筋と外筋に分けて、各働きを詳しく説明していていく。

内筋より外筋のほうが、エッジボイスやホイッスルボイスなどいくつかの重要な声に関与していて複雑なので、外筋の項目のほうが情報量が多いです。

内筋(内甲状披裂筋)

内筋(内甲状披裂筋)とは、声帯を緊張させ、収縮させ、分厚くするための筋肉。
それによって声が重くなり、男っぽい声、力強い声、良い声になる。
声量を出したり、低音を発声するのにも欠かせない筋肉。

喉頭位置を引き下げた時に最大限発動する。
内筋を発動させるにはどうしても呼気の量や勢いが必要(発動の努力性が下がってくると別だが、基本的には必要)。

内筋は声帯を収縮・緊張させて分厚く(重く)する効果が主であり、『閉鎖』としての役割は、『閉鎖筋』で閉じきれない真ん中の部分を閉じる程度。

女性は基本的に前筋(輪状甲状筋)が強く、内筋が弱すぎる人がほとんど。
前筋は、声帯を薄く引き伸ばす(伸展させる)筋肉であり、高い声や女性的な声、やわらかい声を出すために欠かせない筋肉。

声帯は収縮させるより伸展させるほうが難しい。
体のストレッチと同じで、伸展は意図的に強めていかないと、時とともに衰えていく。

内筋は最も危険な筋肉と言えるが、『良い声』を出すために最も重要な筋肉である。

上述のように、収縮はただでさえ老化などで勝手に強くなっていくのに加えて、地声(内筋が強く働いた声)は固着しやすい。
あまりに地声を出しすぎると、その日一日、または翌日になっても裏声が出ない状態や高音が出ない状態、つまり地声固着の状態に陥ったりする。

内筋は声帯を分厚くしてひっつける筋肉なので、ポリープや声帯結節の原因にもなりやすい。

勘違いされがちだが、ノイズのなっている声、つまりダミ声やガラガラ声は、仮声帯や外筋が内筋を包み込み、分厚く擦れ合わさるのを防いでくれているからむしろ安全である可能性が高い(以下の『外筋と仮声帯の関係性』の項目参照)。

男声の出し方

女性が男性らしい声で歌ったり喋ったりするにはどうすればいいのか。
男らしい声や低音を出すのに必要な、鍛えるべき喉の筋肉は、ひたすらに内筋だ。

男が女の声を出すにはとにかく徹底的に伸展を鍛え、閉鎖筋によってぴっちりと閉鎖し、その上で内筋を少しだけ入れるという面倒な事をしないといけない。

その事を説明した記事を下に貼ったが、その記事の文字数は約25,000文字にも上った。
男が女の声を出すということが、いかに複雑で面倒で大変かわかると思う。

中声(または女声)の出し方 地声と裏声を分離し引き下げ(伸展/開大/収縮)と引き上げ(閉鎖筋/仮声帯/外筋)を鍛える 喚声点から逃げず『拮抗』させる
地声のまま、ひっくり返らずに、楽に、または心地よいテンション感で、力強く、高音を発声するにはどうすればいいのか。 男性が女性的な声で歌った...

女が、男のような低く太い声を出すのは、男が女のような声を出すよりもだいぶ簡単。
オッサンやヤクザになりきって、ドスのきいた声を出し続けるだけ。
内筋が最も発動するのは喉頭を引き下げたときなので、極限まで喉仏を下げた状態で、オーオーと低音を出すと良い。
その際に、ノイズは乗らないほうがいい。

内筋を強く発動させるにはどうしても呼気の強さが必要なので、閉鼻(鼻から息が出ない状態、鼻声の逆)を意識するといい。
口から勢いよく息が出るほうが、呼気の量や勢いが増え、口を大きく開けると喉頭も引き下げやすくなる。

普段から気だるそうに、低い声を出そうと意識するだけでも、声は低く男らしくなっていく。
女性が男性の声を出すには、とにかく、内筋を鍛えまくれば良いということだ。

注意点としては、あまりに内筋を働かせすぎると、元の高い声や女性らしい声を出すのが難しくなる可能性があるので注意。
そうならないためには、伸展を鍛える練習も同時進行していくといい。
伸展を鍛えても、収縮が弱まるということはない。

男性キャラや少年キャラを演じる女性声優は数多く居ても、女性キャラを演じる男性声優は少ない。
そういうところからも、男性が女性の声を出すより、女性が男性の声を出すほうが簡単だということがわかる。

女性も男性も、中年以降になってくると自然と声が低くなっていく傾向がある。
中には男みたいな声になっている女性もいる。
女性の場合、閉経によるホルモンの影響で声帯が物理的に変わるから、という理由もあるようだが、人格の影響も大きい気がする。

男性は苦しそうに歌う人が多い

ほとんどの男性の声は内筋が強く、したがって声が低く太い。

内筋(収縮)だけ強く前筋(伸展)が弱いと、音程が取りづらくなる。
とれていても、どこか半音の半音ずれているような聴こえ方をすることが多い。

地声っぽいまま楽に、安全に高音域を出そうと思うと、早い段階で前筋や閉鎖筋が優位なバランスに移行する必要があるが、収縮だけがあまりにも強いとうまくいかない。
内筋はどうしても呼気の量を必要とし、声を出す時に喉の緊張を強く感じるため、しんどさ・苦しさが伴う。
だから多くの男性は高音が出ないことに苦しみ、声が意図せずひっくり返ったりして歌いづらい思いをしている。

女性は男性よりも、前筋(伸展)が強い人が多い。
高音発声の要でもあるので、女性は高音が楽に出せる人がほとんどだ。
前筋は音程をコントロールする筋肉でもあるので、女性は音程が正確な人が多い。

男のように、重い声を苦しそうに引っ張り上げて、失敗して間抜けにひっくり返る、という女性はそこまで多くない。

多くの人がアンザッツを用いた発声訓練に興味を示さない理由 多くの女性が発声訓練に興味を示さない理由
人とカラオケに行ったり、弾き語り配信などを見ていると、 「高い声出せるようになりたいなぁ~」 などと言う人が結構いる。 そういう人...

緊張(固さ)と弛緩(柔らかさ)

上に、甲状披裂筋は声帯を収縮させ、『固く』『緊張』させる働きがあると書いた。
多くの女性の声はとにかく伸展・開大が強く、(男性に比べて甲状披裂筋が弱いということもあって)声帯は基本的に柔らかく弛緩している。

ただ、女性は内筋が弱いせいで、低音が出ない、声を張れない、声に迫力がない人が多い。

柔らかくても、固くもできないと、ゆるみすぎていて、チカラが出ない。
固くできても、ゆるむこともできないと、ガチガチに緊張して身動きすら取れない。

ただあくまで、柔らかくする・ゆるむのが先。
そして、とてもやわらかいものがとても固くなったときに、チカラが発生する。

だから、女性は歌を歌うことにおいて男性よりもスタート位置が良いと言えるのではないだろうか。

ざっくり言うと、声を成長させるには、主に、男性は伸展・弛緩・柔らかさを鍛え、女性は収縮・緊張・固さを鍛えることが重要になるように思う。
つまり、自分に足りない部分を鍛えるということ。

外筋(外甲状披裂筋)

外筋とは、内筋と同じく、地声系の筋肉。
内筋と違い、声帯を収縮ではなく閉鎖させる(閉鎖筋(側筋、間筋)のサポートもする)。
(どちらも甲状披裂筋つまり地声系の筋肉なので、外筋も多少は声帯を収縮させるかもしれない。)

内筋の逆で、呼気の量が低いほうが発動させやすい。
内筋の逆で、喉頭位置を引き上げた時に最大限発動する。

内筋と違い、ノイズ系の筋肉。

エッジボイスという名前は有名だが、外筋はエッジボイスを発声する際の要となる。
エッジボイスを発声しているときには、外筋が最も発動し、前筋は弛緩し、内筋も弛緩している

甲状披裂筋という枠組みの中で、外筋は強く発動し、内筋は弛緩しているということ。

地声であればどんな声でも、内筋はこのくらい発動し、外筋はこのくらい発動している、という感じで、混ざっている。
エッジボイスであれば外筋100%、アンザッツ3aであれば内筋100%であるべきだが、そうでない声(喋り声や歌声など)はすべて、外筋と内筋のパワーバランスは色々である。
(イデア論的に『100%発動』という状態はありえないが。)

そして最も重要なのは、内筋の発動と外筋の発動は反比例するということ。

だから、単に地声の筋肉として『甲状披裂筋』と一括りに語ってしまうのはまずいのである。

以下では、そのことについて詳しく書いていく。

内筋の発動と外筋の発動は反比例する

重要なことなので繰り返すが、
『内筋(内側甲状披裂筋)』

『外筋(外側甲状披裂筋)』
の発動は反比例する。

つまりどういうことかと言うと、
『内筋が入れば入るほど外筋は入らなくなり、外筋が入れば入るほど内筋は入らなくなる』
ということ。

もちろん、甲状披裂筋自体入ってない場合は別である。
(冒頭にも書いたように、純粋な裏声や裏声系アンザッツには甲状披裂筋が入ってはいけない)。

あくまで内筋も外筋も甲状披裂筋であり、
『甲状披裂筋という枠組みの中で、内筋と外筋の発動具合は反比例する』
ということ。

上に、女性は内筋が弱いと書いたが、外筋も弱い。
多くの男性は喋り声にエッジボイスが混じっているが、女性は喋り声であれ歌声であれエッジボイスが混じっている人は少ない。
つまり女性は、地声の筋肉である甲状披裂筋自体がそもそも弱い。

女性が地声を出しているときは恐らく、閉鎖筋による純粋な閉鎖に、わずかに甲状披裂筋が入っているという感じだろうか。

さらに、女性は仮声帯も弱い(ジェンダー観的にも、がなり声を頻繁に出す女性は少ない)。
女性はただただ前筋つまり伸展が強烈で、声帯をかなり薄く使っている、ということ。

外筋混合はつまり地声と裏声の混合 外筋が顕在化する理由

内筋と外筋はとにかく混合しやすい。
どちらも甲状披裂筋なので当然だ。

具体的な例だと、
『高音で内筋がすっぽ抜けた物足りない声になった時、エッジボイス(つまり外筋)が顕在化しやすい』
など。

エッジボイスが混じっているということはすなわち、その分内筋が抜けているということだ。
つまり、良い声から遠ざかっている状態だ。

そして、高音発声時に、エッジボイスが混じっている人の発声は危ない。
表現としてならともかく、意図せずエッジボイスが混じっている場合は、典型的な『外筋混合』だ。

声をちゃんと張る、またはベルティングするために、内筋をしっかり入れていくためには、外筋が意図せず入ってしまってはいけない。
まずクリーントーンで出せなければいけない。

上述の、歌声にエッジボイスの音が意図せず混ざってくる人や、アンザッツ3aを単純発声した時にエッジボイスの音が混ざる人は外筋混合している。
アンザッツ5に外筋や内筋が混合している人も、外筋混合している。

外筋混合は結局のところ、『地声と裏声の混合』『伸展不足』の最たるものではないかと思う。

外筋混合をなんとかするには、地声と裏声を分離するしかない。
地声と裏声を分離し、特に裏声つまり伸展、そして閉鎖筋による純粋な閉鎖を鍛えないと、外筋混合は解消されない。

外筋混合は、収縮が弱い(努力性が高い)、閉鎖筋による純粋な閉鎖ができない、伸展が弱い、など、『何かが弱いから、外筋ノイズが意図せず顕在化する』のだと思う。

高音で外筋じゃなく内筋をしっかり入れてベルティングするのも、結局は強力な伸展がないとできないし、伸展を鍛える、または維持するには、大前提として地声と裏声がしっかり分離できている必要がある。

つまり、外筋混合を解消するには、純粋な地声と純粋な裏声を徹底的にやり、まず地声と裏声を分離するしかない。
それが出来た上で、特に裏声つまり伸展を優先的に鍛える。

まず伸展が弱いと閉鎖も収縮も開大もしづらい。

自分の場合は、呼気で純粋な地声をやり(吸気は効きすぎるので慎重に)、呼気と吸気で純粋な裏声をやり、吸気でホイッスルボイスをやることで、呼気吸気問わず外筋混合は解消されていった。
加えて、アンザッツ6つまり引き下げた裏声と、アンザッツ5つまり引き上げた裏声もどちらもやるといいと思う。

以下にも何度も書くが、地声と裏声の分離は男女問わず最優先事項であり、まずやるべきことであり、どれだけ喉が成長してもやり続けなければいけないことだ。

『発声訓練は分離に始まり分離に終わる』
とすら言えると思う。

その上で、多くの男性が発声訓練で重点を置くべきは、伸展・開大・閉鎖筋を鍛えることである。
もちろん、収縮も鍛えて、内筋発動の努力性を下げることも必須。

繰り返すが、外筋混合している人は地声と裏声の分離が出来ていない、伸展が弱い、純粋な閉鎖が弱い、収縮の努力性が高い、ということなので、改めてしっかり地声と裏声の分離をすべきだ。

外筋と仮声帯の関係性

外筋と仮声帯には多くの共通点がある。
どちらも、ノイズ系の筋肉である。
どちらも、喉頭位置が高いほうが最大限発動する。
どちらも、発動すればするほど内筋が抜ける。

なぜ、仮声帯が入るほどに内筋が抜けるかだが、それは、仮声帯が呼気を受け止めることで『抵抗の点』が働き、呼気圧が軽減されるからだ。
内筋を発動させるには呼気圧が必要であり、逆に言うと呼気圧によって意図せず発動しすぎることがある。
仮声帯が内転し強制的に呼気を受け止めてくれれば、内筋の発動し過ぎを緩和できる。
詳しくは以下の記事参照。

仮声帯発声と吸気発声の方法と効果 閉鎖筋が鍛えられ呼気圧迫を軽減できる 声の成長速度を早める 等
仮声帯発声とは、声帯の上にある仮声帯というひだを内転させて出すノイズのかかった声のこと。 その声を出すことによって、主に閉鎖筋が鍛えられる...

加えて、
『外筋は、呼気量が低いほうが発動しやすい』
というところも重要になってくる。

仮声帯の内転によって、声帯が受ける呼気量が絞られるわけだが、それによって内筋よりも外筋のほうが発動しやすくなる(これはあくまで仮説。外筋ではなく閉鎖筋が発動するのかもしれない。)

外筋も仮声帯ノイズも、発動すればするほどに内筋が抜けるが、あくまで、
『伸展を促進』
するわけではない。
(何度も書くが、外筋はあくまで甲状披裂筋であり、甲状披裂筋は地声系の筋肉だ。
地声系の筋肉が伸展を促進させることはない。)

じゃあなんと言えば良いのかと言うと、
『収縮を緩和する』
がいいのではないだろうか。

『伸展を促進』

『収縮を緩和』
は根本的に違うので、間違えてはいけない。

伸展を促進するのは、前筋と後筋だけだ。
伸展と開大は、喉頭位置を引き下げた時に、最大限発動する(アンザッツ6など)。

外筋も仮声帯も、喉頭位置を引き上げた時に発動するので、発動させすぎるとやはり伸展と開大は死ぬ傾向にある。

巷の発声訓練でもよく言われることだが、
『甲状披裂筋』(つまり地声)
と、
『輪状甲状筋』(つまり裏声)
は真逆の筋肉であり、その二つを同じくらい鍛え上げた上で、『拮抗』させることが重要なのである。

外筋は声帯の保護機能?(仮説)

そこまで考えたところで俺は、
『仮声帯と外筋は、内筋を包み込んでいる』
というような印象を受けた。

仮声帯と外筋が、呼気圧から内筋を守ってくれている、という印象。

風邪、気管支炎、痰絡み、寝起きなど、調子が悪いときには必ず外筋が主張し開大が死ぬ。
これは仮説だが、体の調子悪いがときに内筋がフル稼働して声帯が分厚く擦れたらまずいから、甲状披裂筋の中でも外筋の方が主張して、声帯を保護するのかもしれない。

そう考えるとやはり外筋は声帯を保護する役割が大きいように思う。
その代わり声は糞になる。

身体の保護機能としての役割が大きい外筋という筋肉をできるだけ主張させないことが、良い声で歌うために必須なのかもしれない。

エッジボイスの危険性

エッジボイスは内筋はほぼ完全に弛緩しているが、伸展の要である前筋(輪状甲状筋)もほぼ完全に弛緩している。

つまり、やりすぎると伸展が死ぬのである。
エッジボイスは喉頭位置は高めのほうが発動しやすいので、必然的に開大も死ぬ。

実際にエッジボイスをやりまくった後に声を出すとよくわかると思う。
特に、吸気エッジボイスをやりまくってみてほしい。
喉頭位置はどこでもいいが、とりあえず最大限高いほうが外筋は最大限発動するのでわかりやすいはず。

やった後、あらゆる声の調子悪くなるはずだ。
特に吸気3aがガバるはず。

ホイッスルボイスは外筋と前筋が発動し、内筋は弛緩し、わずかに開大(後筋)することで、超高音が発声できる。
ホイッスルボイスも、やりまくった後はやはり開大が死ぬ。
ホイッスルボイスも喉頭位置は引き上げた方が出しやすいので、エッジボイスをやりまくった後と同じく、引き下げが一時的に死ぬのだろう。

エッジボイスもホイッスルボイスも、やりすぎると開大が死ぬが、どちらかというとエッジボイスのほうが危険だ。
なぜなら、ホイッスルボイスは前筋は弛緩していないからだ。

(ホイッスルボイスには気流型と構音型があり、発動する筋肉も音色も微妙に違う。
詳しくは中声の記事参照。)

上にも書いたが、結局は、高音で内筋を入れてベルティングするのも、女性的な声を出すのも、地声と裏声を分離を徹底的にやるしかない。
その後、前筋、つまり伸展を徹底的に鍛え上げることが必要だ。

エッジボイスをやりまくるのは、伸展・開大が死ぬので、危険性が高い。
地声と裏声の混合がひどくなる、と言える。

『ぴっちり閉じる』

いろいろと複雑に感じるかも知れないが、ただひたすらに、
『ぴっちり閉じる』
ということが重要だ。

地声と裏声の分離も、前筋も閉鎖筋も甲状披裂筋も、すべてその一点のためにあると俺は思う。

声帯をぴっちり閉じるとは、
『前筋で十分に伸展し、閉鎖筋で純粋に閉鎖し、自由に甲状披裂筋(特に内筋)を入れられる』
ということ。

それができれば、地声のまま楽に(または心地よいテンション感で)高音を出すことができるようになる。
声を無理に張らずとも、高音を出すことができるようになる。
さらに、内筋を任意の強さで入れられるので、少し張る~強烈にベルティングする、という風に自在だ。

内筋しか強くないと、張ることしか出来ない。
前筋しか強くないと、張ることが出来ない。
張ることが出来ないのも、張ることしかできないのも、どちらも不完全だ。

ぴっちり閉じることができれば、張らないことも張ることも、どちらもグラデーション的にできるようになる。

yasuさん、中川晃教さん、VIP店長さん、Toshiさんなどがそれにあたる。

彼らは、地声と裏声がしっかりと分離されている上に、閉鎖筋で純粋に閉鎖もできているので、ぴっちり閉じれている。
地声と裏声がしっかりと分離されている上で、地声と裏声がしっかり融合している。

閉鎖筋で十分に閉鎖できているということはつまり伸展が強いということなので、上記の4人の声はある程度中性的~女性的に聞こえる。
もちろん甲状披裂筋も強いから、あれだけ力強く張れている。

表現によってあらゆる閉じ方ができるようになるべきだが、基本的には『ぴっちり閉じる』ことを目指すべきだと俺は思う。

ベルティングの定義

ベルティングについてだが、ベルティングという横文字の定義は難しい。
ただ声を張っている状態のことをベルティングとは呼ばない。

狭義のベルティングとは、特定の音高において、
『極限まで内筋を入れて良い声で張る』
という感じだろうか。

喉頭位置は問わないが、上述のように、内筋は喉頭位置を引き下げた時に最大限発動するので、狭義のベルティングは引き下げ優位かと思う。
しっかり引き下げているわけなので、仮声帯や外筋ノイズはできるだけ混じってはいけない。

張り上げ

『張り上げ』という言葉はベルティングと意味が近いように感じるが、ノイズが混じっている印象や、混合している印象、不健康な印象、などが言葉が持つイメージとして定着しているように思う。

俺も基本的に、張り上げは好きではない。
10代男子のカラオケでの汚らしい張り上げとか。

張り上げている男性に危なさやしんどさを感じるのは、

十分に伸展していないが取り急ぎ力強く叫びたい。

・呼気に頼って内筋を持ち上げて絶叫。
・閉鎖筋で純粋に閉鎖できていない。
・張ることしかできず、常に大声。
・スタミナ消費が激しく、素早い曲が歌えない。
・優しく歌わないといけない曲が歌えない。

だから、伸展が弱い多くの張り上げ男性には不健康な印象や苦しそうな印象を受ける。
声の自在度が低すぎるが故の苦しさと言える。

声を出すために重要な順で言うと、
『伸展→閉鎖(閉鎖筋)→内筋』
だ。

だから、ベルティングというのは伸展の質も閉鎖の質も静的に含んだ最後の結果みたいなものだから、各質が問われる。
張り上げている男性は閉鎖筋で十分に閉鎖できていない状態で、内筋を力任せに呼気で押している。

上にも書いたが、『伸展→閉鎖→内筋』がちゃんとできている人、つまりぴっちり閉じれている人は、地声のまま張らずに高音を出すこともできる。
だから、閉鎖筋による純粋な閉鎖もできる真のベルターは、軽い声も出せる。
男性に一番よくある『声を張り上げないと高音が出ない』という人は閉鎖筋と内筋を混合している典型例だ。

アンザッツ3がaとbに分かれている理由は、内筋がフルに働くか繊細に働くかの違い。
前者は、男性ならある程度すぐできる。

だが後者は、まず徹底的に地声と裏声を分離し、伸展を鍛え、閉鎖筋単体でしっかり閉鎖できるようになり、張ることも張らないこともできるようになる必要がある。

魅力を感じる例

危険な張り上げにも例外はあって、初期のエレカシがそれにあたる。
ファーストやエレファントカシマシ2、生活あたりの血管切れるほどの絶叫は最高だ。

そういうこともあって今のエレカシより、伸展が弱い頃の初期~中期までのエレカシこそ評価されるべきだといつも思う。
歌はもちろん、楽曲、詞、精神性が極まっている。


エレファント カシマシ 5

他に危険な発声と言えばマリオ・デル=モナコ。
マリオ・デル=モナコ並に引き下げ、ノイズも鳴らさずに内筋をむき出しにして歌うと、早い段階で声を失う可能性が跳ね上がる。
収縮しすぎて、伸展が死ぬ。

声にしても精神にしても、混合が強くなり、中間に偏ると、極端に端に偏ることが難しくなる。
ベルティングという、危険を顧みないほどの強烈な地声への偏りというのは、中間に居続けようとする、安全を求める精神があると生まれづらいように思う。
(自在性が高まれば、柔らかい声も、安全かつ迫力のあるベルティングも、両方できるはずだが。)

力任せの張り合げも、一部の才能あるプロの場合は、素晴らしい場合があるがやはり危険は危険。
でもその危険さえも、場合によっては魅力的になることがある、ということ。

騒音おばさん(河原美代子)とスティーブン・タイラーの声のバランスが似ている

久しぶりに騒音おばさんの声が聴きたくなって聴いてみたら、スティーブン・タイラーと声のバランスが似ていることに気づいた。

1:49 極限ベルティング。

騒音おばさんこと河原美代子氏↓

ベティ・ライトにも似てる 3:53~とか特に。

伸展が強い(加えて、地声系の筋肉も恐ろしく強い)とここまで迫力がある声が出せるということがわかる。
伸展が強くないと、高音でここまで内筋を入れることができない。
当然三人とも、仮声帯もすごい。

騒音おばさんの歌

シャウトが凄まじいボーカリスト決定戦
http://mimizun.com/log/2ch/hrhm/1243922860/

12 :名無しさんのみボーナストラック収録:2009/06/02(火) 17:06:04
騒音おばさん

50 :名無しさんのみボーナストラック収録:2009/06/06(土) 13:19:25
ベタだけどスティーブン・タイラー
あの声量と高音は凄いと思う

騒音おばさんがカバーしたI Don’t Want to Miss a ThingとDream Onが聴きたい。

実際、騒音おばさんはカラオケとかでどんな曲を歌ってたんだろうか。
声が高いと言われるジャパネットたかたの社長は、番組内のカラオケでは低い演歌を歌っていた。

たぶん騒音おばさんも、カラオケでは低く歌うのだと思うが、ここまでベルティングできるんだから、ハードロックを歌ってほしい。
怒鳴った時の声は上の動画のようにすごいが、歌うときには、怒鳴り声なんて出すものではない、と思って抑えるんじゃないだろうか。
実際は怒鳴ったときにこそ物凄い発声能力を発揮できているので、それを歌の中でも使うべきだと思う。

この声質や発声能力に、歌唱力(節回しなど)が伴えば、本当にスーパーボーカリストになれる。

河原美代子(騒音おばさん) Vocal Range (F3 – A7) LIVE
という動画も作られる。

まとめ

以上です。

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このブログの記事は、一学習者・一素人の気付きとして書かれたものです。
特に発声訓練に関する記事の内容は、安易に実践すると危険な場合がありますので、自己責任でお願いします。

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