すべての男は消耗品である。VOL.3 1990年5月~1992年9月 バブル終了 著者:村上龍 書評、レビュー(感想)

VOL.2に続き、『すべての男は消耗品である。VOL.3 1990年5月~1992年9月 バブル終了』を読んだ。
村上龍氏のエッセイ『すべての男は消耗品である。』はKindleでかなり安く買えてすぐに読めるので、ちょっとしたスキマ時間に読んでいる。

相変わらず「あ、やめよう」「あ、暗くなってきた」「何を言おうとしたんだっけ」などが出てくるラフな文体。
VOL.2と同じく男の弱さや父権の話はほとんど出てこず、基本的に海外のことと、海外と日本を対比して日本の悪口を言う感じ。
「すべての男は消耗品である。」というタイトルはほとんどVOL.1で語られた内容を言っている気がする。

おこがましいとは思うが俺は村上氏と似てるところがあるように感じて、読んでいて本当に共感出来る部分が多い。
このエッセイを読んでいると海外への興味も出てくるし、読んだだけで自分が以下に無知で狭い世界しか知らないかわかるのでやはり楽しい。

個人的な評価は★★★★☆

映画撮影、キューバの良さ、日本の悪口

VOL.2よりも、映画撮影の話が多かった。
この頃村上氏は『トパーズ』という映画を撮っていたようで、映画撮影の手法や苦悩の話が多く出てきて勉強になる。
(最近俺はマンガを書こうとしているが、マンガのコマ割りはまさに映画のカットと同じらしいので。)

後はおなじみの
「今、旅先(ニューヨークなど)でこの原稿を書いている」
という書き出し。

今回は前回よりもさらに海外旅行の話や海外の良さアピールが多くて笑ってしまった。
そしていつもどおり日本の悪口を書いているのだが、今回はかなり辛辣で、暴言に近いのもあった。
もう悪口を言っている場合ですらないとさえ書いていた。

俺は海外に行ったことがないが、本当に日本よりも良いんだろうなぁとこのエッセイを読んでると思ってしまう。
村上氏は好きな時に海外に行き、滞在し、おいしいものを食べ、本当に楽しそうだ。

今回は特にキューバやキューバ音楽に心酔しているようだった。

だがAmazonのレビューにもあったが、村上氏は海外と日本を比較しては日本はクソだクソだと連呼するが、結局村上氏もほとんど日本でしか勝負をしていない。
英語で小説を書いて海外で通用しているわけではない。
そういうところから、なにか個人的な日本ヘイト、海外コンプみたいなものがあって、やたらと日本叩きをしている部分があると思うので、俺はあまり真に受けすぎないよう、必要な情報だけ得る感じで読んでいる。

日本という田舎

でも本当に、世界から見ると本当に日本は田舎なんだろうな。
俺は国内旅行さえあまり行ったことがないし家に引きこもっているので、世界の田舎者日本の中でも更に田舎者だ。
以下の部分は特にハッとした。

本当はひどいテレ屋で礼儀も知らないからシラフの時は挨拶もできないくせに、少し酔ったりすると急になれなれしくなって肩なんか突然組んできたりする。
そういう田舎者は「他者」と付き合うことに慣れていないのである。 他者というのは基本的に理解し合えない者を指す。

他者とのコミュニケーションだけがその人間に想像力の芽を与えるのだが、それは楽なことではない。

田舎者がもてないのはファッションがださいからではない。
他者との付き合い方を知らないからだ。

敵か味方かという二面性でしかよそ者を判断できず、辛抱強く相手とのギャップの深さを測る、ということを知らない。

言うまでもないことだが、日本そのものが田舎者なのだ。

酔うと急に馴れ馴れしくなるってまさに俺だ(村上氏のことでもあるようだが)。
他者を、敵か味方かの二元論で捉えてしまうのもまさに俺。
耳が痛い。

まるで黒人そっくりに歌える、という歌手がもてはやされるのは恐らくこの国だけではないだろうか?
それは、黒人達のいる世界と切り離されているという幻想が支配しているからだろう
ゴダールのように撮る、なんて事がまかり通るのも、ゴダールのいる地平と別のところに立っているという幻想のせいだ

言語の違い、価値観の違いをわからせるのがとても辛い、というのがアメリカの対人恐怖の底にあるとすれば、わかり合わなくてはならない、違いを際立たせてはいけない、ということが日本の対人恐怖の底にあるような気がする。

村上龍と中島らも

俺は村上龍氏と中島らも氏は似ていると思っていた。
二人とも1952年生まれだし、ドラッグに傾倒するところも似ている。

二人の対談が実現すればよかったなと思うが、今回のエッセイを読んで、もしかしたら村上氏とらも氏は相性がめちゃくちゃ悪いんじゃないかと思った。

俺はらも氏の明るい悩み相談室を全部読んだが、彼は日本の下町の雰囲気を愛している。
だが村上氏は上述のように、日本の閉鎖的な、良く言えば田舎的な肩の寄せ合いのようなものを毛嫌いしている。
日本の音楽もゴミみたいだと言っていた。

表面だけ見て似ていると思っていた二人だが、日本に関する価値観という部分で間逆な気がする。
だから対談が実現しなかったんだろうか。

気に入った文章

父権の崩壊は、平和が原因ではない。
情報の量のムチャクチャな増加と、その伝達のスピードアップが原因なのだ。
だから、無理に父権を復活させても(そのこと自体が不可能だが)、男の弱体化に歯止めがかかるわけではない。

男が威張れなくなった、父親が威張れなくなったのは平和が原因ではなく情報の増加とスピードアップが原因。
最近ハラスメントがあるとすぐにTwitterで議論が巻き起こるが、そういうのをみていてまさにそう思う。

オレ達が、見て快く思わないものは、オレ達がサバイバルしていく上でデメリットになるために、それを嫌悪する信号がどこかに刷り込まれているのだろう。
クモとかゲジゲジとかヘビとかサソリとか、好きな人もいるが、大体は本能的に嫌う。

犬やネコやヤギや人間の乳幼児でも、丸々と太っている方を可愛いと思う。
やせている方を可愛いと思うような刷り込みがなされていれば、その種は、弱者により注意を向けることになり、きっと絶滅してしまうかも知れない。

このホテルの部屋には、机がなくて、トランクを椅子代わりにして、洗面台で書いている。
実は、ここはペルーのリマだ。
洗面台には、見たことのない茶色の小さな虫がたくさんいる。
人間の描写について思考をめぐらすには絶好かも知れない。

ワロタ。

まとめ

村上氏の映画を見てみたいと思ったが、あまり評判がよくない上に、トパーズに関しては2時間もあって冗長だそうなので見なくていいかと思った。

キューバやキューバ音楽についても気になった。
俺は海外旅行するなら綺麗で安全なところがいいので、キューバはよさそうだ。
ニューヨークとかは微妙で、フランスやイタリアやイギリスは行きたい。
キューバ音楽はよくわからないのでYoutubeで聴いてみようと思う。

VOL.13近くある村上氏の『すべての男は消耗品である。』というエッセイだが、今後どのように変遷するのか楽しみだ。
(ちなみにちょうど今年9月くらいで連載が終わったようだ。)

村上氏のエッセイは毎回海外の視点を提供してくれるので面白い。
ほんと海外旅行に行きたくなる。

VOL.4も楽しみです。


すべての男は消耗品である。VOL.3: 1990年5月~1992年9月 バブル終了

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